クリニックスタッフだった私が
特殊な治療方針をとる今のクリニックの院長に
日本一のPTSD専門医療機関をつくるために 後継者として指名され
医師になると決めてから
私は自分の人生がまるで 自分の人生でありながら
自分の人生そのものではないような
何か 逃れられない宿命のなかで
もがくことしかできないような
そんな人生を歩んでいると 感じていました
医学部の受験に失敗して
今の薬学部へ行くことになったのだけど
私の宿命はちっとも変わることはない
むしろ 前よりより強く
その宿命に強く強く 縛られているような気さえするのです
たった一人で青森から出てきた私は
今まで自分のことしか考えずに人生を選んで来ました
宿命などとは無縁な世界で
自分のやりたいことをまっすぐに見据えて
今まで生きてきたつもりです
それがこういった宿命を背負うことになって
私は大学中で
一番大変な思いをしている人間だと思っていた
でもそれは
間違いなんじゃないかと気づいた。
確かに大変は大変だけど
たくさんの人間の生が私の腕にかかりながら
私はこの場から逃げることもできず
学費を援助されることもなく
ひたすら働いて 勉強して 薬学を学んでいる
薬学なんて それほど大きく
心を揺さぶられるものでもなかったのに。
そんな私とは
別の意味で
いろんな人がいて
その人たちは私とは違う 大変さを背負っていると
昨日 いろいろ調べてて思ったんです
私だけが
苦しいんだと思ってた。
私だけが
特別大変だと 思ってた
たった一人ぼっちで
ここにいるけど
他の人にも
違う大変さがあったなんて
私は 私の大変さに埋もれて
気づくことさえ 出来なかったし
想像さえ したくなかった。